引っ越しを業者に頼むときは、よほど荷物が少ない場合を除き、引っ越し作業を滞りなく進めるための下見が必要です。下見をすることにより、建物と家財の量や大きさなどを把握し車両と作業人数の割り出し、搬出の際の養生やトラックの進入経路、駐車位置や道幅などを考慮して料金を適正に算定します。
下見では何を聞かれるのか、あらかじめ準備しておくことがあるのか、気になる人もいるようですので解説したいと思います。
下見で聞かれること
引っ越し業者の営業担当者が訪問の上、建物や室内の下見をして見積もり書を作成する一環の流れを「下見」といいます。業者によって営業やプランナーやコーディネーターと名刺の肩書はそれぞれですが、どこでもほぼ同じ役割を担います。業者の規模によっては、実際に引っ越し作業をする社員が下見をしたり、社長が行ったりするところもあります。
「下見に際して何か用意しておくことはありますか」と尋ねると、業者の返事は多くの場合、客の負担にならないように「特に準備していただくことはありません」と答えることが多いです。しかし、限られた下見の時間を有効に使うためにも、引っ越し料金を少しでも安くするためにも、下見で聞かれることを想定して最低限の準備はしておきましょう。
引っ越し希望日の候補をいくつか設定しておく
新築の完成を待つ場合は別として、転勤や住み替えによる通常の引っ越しでは、だいたいの引っ越し日を決めないことには、正確な引っ越し料金を計算できません。引っ越しにもオンシーズンとオフシーズンがあり、引っ越しが混み合う時期は通常期よりも料金が高くなります。また、月初や月末、曜日や六曜によっても料金の変動があります。
この日しか動けない、と思っていても他の日だとかなり安くなる場合もあるため、手伝いの人や家族の状況に合わせて引っ越しができる日を、いくつか設定しておけば料金が安くなる確率は高くなるでしょう。
特に希望日がなく、いつでも構わないという人は安く引っ越せする可能性が格段に上がります。気をつけたいのは、自分が引っ越しをしたいと思う日でも、周囲の状況によっては作業に支障をきたすことがあります。
たとえば、エレベーターが1基だけのマンションに住んでいる場合、エレベーターや電気設備の点検日に当たってしまったら、高層階に住んでいる場合は確実に作業に支障が出ます。大がかりな道路工事の予定がある場合は、近くにトラックを停めることができないことも考えられます。
もうすぐ引っ越すのだから自分には関係ない、と事前の工事のお知らせをよく読まなかった人が、引っ越し当日に工事があることが分かり、トラックまで荷物を手運びする距離が長くなり気まずかった、ということがあります。引っ越し先の周辺の工事予定や設備点検日時を管理会社にあらかじめ聞いておきましょう。
引っ越し先の住居の説明ができるようにしておく
現在の住居の状況は下見で分かりますが、引っ越し先の状況は実際に見てきた人が説明する必要があります。遠距離の転勤で、ご主人しか新居の内見をしていない場合など、物件の広告や間取り図や構造図などを手元に用意して、説明できるようにしておきましょう。
聞かれることは、新住所、集合住宅は建物名と居住階、エレベーターの有無、玄関前の道幅などです。エレベーターが無い場合は、階段の形状や幅、踊り場の奥行きなどが伝えられればベストですが、引っ越しに慣れていない人はそこまでチェックすることはないでしょう。
一戸建ての場合は、室内の階段の様子や掃き出し窓の大きさなど分かる範囲で説明できると良いと思います。ただ、玄関前の道路だけは普通車が余裕ですれ違える、普通車がギリギリ通れる一方通行、程度のことがわかるとトラックの大きさを決定する要素になるため、把握しておいた方が話がスムーズです。
Googleマップの航空写真が表示されない地域や、記憶にない場合は不動産屋に問い合わせると良いでしょう。
運ぶものと運ばないものをしっかり仕分けておく
現住居にあるもの全てを運ぶのなら問題ありませんが、不要な家具や家電を処分しようと思っているなら、ぜひ下見の際に伝えてください。運ぶ家財のリストに入れられてしまうと余計に料金がかかってしまいます。
そのためにも、どれを運びどれを処分するかの仕分けを、下見当日までにあらかた決めておかなければなりません。細々とした物は良いとして、大きな家財を減らせばトラックも一回り小さくでき、作業人数も減らせるならかなりの料金の節約になります。実際の処分が下見当日までに間に合わなくても「これは運びません」と伝えましょう。
頼みたいオプションサービスを決めておく
引っ越し先までは自家用車で移動するのか、引っ越し業者の車の陸送オプションサービスを利用するのか、ペットについても一緒に連れて行くのか、業者に頼むかなど、とりあえずの方針を決めておきましょう。当日になってみないと分からない、というのでは正しい見積もり料金が出せません。
また、引っ越し日までに全ての荷造りを終える自信がないというなら、荷造りのオプションサービスを頼むにしても、一番手間のかかるキッチン周りだけにしたいのか、全ての家財を任せるつもりなのか、また、荷解きは自分でやりたいのか考えておくと良いでしょう。
しかし、この辺は、あとから間に合わないので急遽依頼したいということもあるため、縛られることはありません。
見られたくないものをまとめておく
下見では、各部屋の家財と収納場所の荷物を確認することになります。ベランダや庭の物や物置きも見てもらいましょう。わざわざタンスの引き出しを開けるようなことはありませんが、その辺に置いてあるものは見られます。見られて困るようなものは、ダンボールに入れて封をしたり、収納ケース等に入れたりして見られないように工夫をしておいてください。
人にもよりますが、収納棚やクローゼット、納戸の中もきっちりと扉を開けて確認して荷物量を正確に把握したい人もいれば、パッパッと開け閉めして概算でリストに記入する人などさまざまです。
押し入れなどは、中に何割程度詰めてあるかの自己申告ですむ場合もあります。見られたくない時は「片付いていないので」と言えば無理強いすることもないでしょう。
余力があれば不要品を処分して整理整頓しておく
どっちみち引っ越し前には不用品を処分することになります。できることなら下見に来てもらう前に要らないものの処分をして室内をスッキリさせておけば、見積もりの所要時間が短くすむばかりでなく、荷物量を正確にチェックしやすくなり、多めに見積もって料金がかさむリスクを減らせます。
また、ある程度の整理整頓ができていれば、引っ越し直前まで荷造りが終わらずに作業員を待たせることがないだろうし、さまざまな約束事がスムーズに進みトラブルもないに違いないと考え、担当者にこの契約を取りたいと思わせることもできます。そうなれば、通常よりも多く値引きをして、安い料金が提示されることも期待できるかもしれません。
確認しておくべきこと
足を運んでもらって下見に来てもらったからには、実際に見なければわからないようなことを質問してその場で解消しておくことが大切です。また、電話では聞きにくい突っ込んだ質問も、対面することで聞きやすい雰囲気にもなります。そのときの対応が業者を選ぶ決め手になることもあります。できるだけ有意義な時間にしてください。
梱包する範囲
ダンボールに入らない電化製品はどうしたら良いのか、大きな家具はどこまで梱包して良いのか、ベッドや本棚などの組立家具は分解する必要があるのか、など荷造りを進めるうちに疑問点が次々に出てくると思います。
これは、業者によっては対応はさまざまで、無料でやってくれるところ、分解組み立てを有料でやるところ、など違いがありますので、事前に見てもらって尋ねておくことをおすすめします。
料金に関すること
引っ越し業者によりプランはさまざまで、同じような名称のプランでも実際の作業内容が異なる場合があります。それぞれの業者のサービス内容の説明はきちんと聞きましょう。
たとえば、積みきり便とトラックチャーター便では、どちらも大差ないと思われそうですが実際は違います。積みきり便は、用意したトラックに積める分だけ運んでもらうというプランです。見積もり担当者が家財の量を見て、大体この大きさのトラックで行けるだろうと思っても、実際には載せられない荷物が残ることがあります。
大きな家財から優先的に積んで行き、最後に残った小型の荷物は自分で運んでもらうことになります。自家用車があり近距離なら安くすむため支障はありませんが、そうでない場合は残された荷物をどうするか考えなくてはなりません。
追加料金を払って他のトラックで運んでもらうのか、他の業者に依頼して運んでもらうことになります。そうなると、最初の見積もり提示額が安くても結局は総額で高い引っ越し料金になってしまいます。
過去には、一括見積もりによる複数業者との競争のため、競合他社よりも少しでも安い料金提示をして契約を取るために、知らないうちに積みきりプランにされてしまったことによるトラブルがありました。最近ではかなり是正されている業者が多いですが、念のため追加料金発生の可能性については聞いておきましょう。
まとめ
下見の所要時間は一人暮らしなどで荷物量が少なければ15分、家族世帯で人数が多く全体の荷物量が多ければ30分から1時間かかります。ただ荷物を見てもらうだけでなく、相手にとっては、我が社のプラン内容やオプションサービスの説明などをアピールして、契約を取るためのプレゼンの場でもあります。
次の業者が来てしまうので早く帰ってもらおうというのではなく、ある程度の余裕を持ったスケジューリングで、上で述べた準備をしてから来てもらうと効率が良いですよ。