近所や家具、家電1点の引っ越しでも業者がおすすめ

引っ越し先が同じ町内でほんの目と鼻の先という距離なら、わざわざ引っ越し業者に頼まずに自分でやってしまおうと思う人が多いようです。また、運びたい家具がひとつしかないときも、大掛かりな引っ越しとは違うため業者に頼みにくいという人もいるでしょう。実際にどの程度の金額でできるのか、自力で運ぶ場合と比較してみましょう。

業者がおすすめの理由

近距離で荷物が少ないなら、台車のついたカーゴに入るだけの荷物を運んでもらえる定額料金制の単身パックなどが使えます。web割引や平日割引などいくつかの割引サービスを併用することもでき、安い業者では10,000円台前半で運んでもらえます。

また、家具一点から運んでもらえるサービスもあり、こちらは単身用の冷蔵庫や全自動洗濯機程度の大きさなら、近距離で7,000円前後で設置までしてもらえます。
それらを踏まえて、以下の説明を参考にしてみてください。

近距離でも業者と料金があまり変わらないケースも

自力引っ越しをしようと思う程度に近距離で荷物がごく少量でも、何が何でも自力引っ越しのほうが大幅に安くできるわけではないため注意が必要です。近いんだし勢いで何とかなる、と無計画に自力引っ越しを行おうとする人は、引っ越し業者がどのくらいの料金になるかを考えずに実行してしまうことが多いようです。

業者の引っ越しでも、休日より平日、朝開始よりも午後からの開始、もしくは時間帯を業者におまかせ、などの条件次第でかなり割引が適用され、安く引っ越しできる場合があります。特に、融通のききやすい近距離の少量の引っ越しは安くしてもらえるチャンスは大きいと言えます。まずは、自力引っ越しの出費がどの程度になるか考えてみましょう。

適正なトラックサイズと料金は

近距離の引っ越しとはいえ、荷物を少しずつ手押し車に載せて何往復もするのは無理があるでしょう。ダンボール程度の小物だけなら自分の車や家族の車で運べるかもしれませんが、載せられない家具はレンタカーでトラックを借りるなどしなければなりません。

一番安い軽トラックは6時間のレンタルで6,000円前後、12時間のレンタルで7,000円から8,000円前後で借りられます。荷台の面積は約1.5畳程度で、きっちりすき間なく詰めば、小型冷蔵庫、洗濯機、20インチ薄型テレビ、布団、電子レンジ、ダンボール普通サイズ10個程度が載せられます。

引っ越し先が近いなら、軽トラックに積める分だけ積んで、何往復かすれば事足りるでしょう。しかし、せっかくトラックを借りたのに空っぽで戻って何往復もする時間がもったいないとも考えられます。荷物量と移動時間によっては6時間でおさまらないかもしれません。

時間を短くしたいなら、さらに大きなトラックを借りる必要があります。ちなみに、2トントラックの標準デッキタイプなら、6時間で8,000円から9,000円前後、12時間で10,000円から12,000円前後で借りられます。荷台の広さは約3.3畳で、軽トラックの倍以上の積載量があります。これなら、軽トラックで2往復していたのが1回ですむでしょう。

載せられる荷物の目安は、冷蔵庫、洗濯機、37インチ薄型テレビ、電子レンジ、パソコン、布団、ダンボール普通サイズ20個、エアコン、整理タンス、洋服タンス、食器棚、ソファ、ダイニングテーブル、椅子4脚と計画的にうまく積み込めばかなりの荷物が運べます。

車両代以外にかかる費用は

平ボディのトラックなら、レンタカー料金以外にオプションで幌やシート、ロープなどを借りることが多いです。なぜなら、積み込みが甘くカーブや急ブレーキなどで荷崩れが起こることがあり、道路上に荷物を散乱させないためにも、荷物をしっかりと固定して囲む必要があるからです。幌であれば突然の雨にも荷物を濡らさずにすみます。

トラックから荷物を降ろして部屋に運び入れるまでに、通路が長い場合やエレベーターを使う場合など、荷物を載せて運べる台車があるとかなり作業が捗ります。こまごました物をまとめて積んで一気に移動することもできます。レンタカーのオプションで用意されていることが多いので、段差がないようならぜひ借りることをおすすめします。

レンタカーは返却の際にガソリンを満タンにして返さなければなりません。近距離の場合のガソリン代は1,000円から2,000円程度見るにしても、上のオプション料金などと合わせると、レンタカー料金の他に約5,000円程度かかると見ておくと良いでしょう。

となると、軽トラックを6時間借りた場合で10,000円前後、2トントラックを12時間借りた場合で16,000円前後の金額が車両だけで必要になります。

手伝ってくれる人へのお礼は

単身者の自力引っ越しで、ダンボールやカラーボックス程度の大きさの家具なら、1人で持ち運ぶことは十分できるでしょう。しかし、家電の冷蔵庫や洗濯機は必ず2人以上で運ぶべきものです。

階段を使わない引っ越しにしても、トラックの荷台に持ち上げたり降ろしたりするには1人では危険です。メーカーの取扱説明書にも必ず2人以上で持ち運ぶことと記載されています。

そのために人手が必要になり、謝礼の必要のない家族がいれば良いですが、家族が近くにいない場合は友人知人の中から手伝ってくれる人を探さなければなりません。当然、重労働を手伝ってくれるわけですから、食事代や謝礼の現金など、何らかの形でお礼をすることになるでしょう。

子どもの小遣い程度の額ではかえって失礼になるので労働に見合った適正な金額を包むことになります。遠くから来てもらったり、引っ越し先からの帰りが遠くなってしまったりする場合は交通費も上乗せしておきましょう。

大きな荷物がある場合や重たい荷物が多い場合は、2人だけでは心もとないし、最後まで体力が持つかわからないため、人数はもっと増やしたほうが良いです。特に、階段作業のある場合は足元が見えず疲労もたまり、荷物を落としたり、ふらついて壁に傷つけたりということが起こりがちです。

安全第一を考えれば、手伝いの人を増やして謝礼の予算も多く見積もるのもやむを得ませんね。

荷物の破損や賃貸住宅に傷をつけた場合は

一番用心しなければならないのが、賃貸住宅への傷です。自分の持ち物なら多少の傷は我慢できますが、賃貸住宅の壁や床、柱などへ傷をつけた場合は、修繕費用が必要になってしまいます。傷の深さや範囲によっては、数万円で足りない場合もあるため用心に越したことはありません。

引っ越し業者なら、そんなことがないように、危険と思われる場所すべてにあらかじめプラスチックダンボールなどの養生資材で広く覆って保護をしてもらえます。また、家具なども傷をつけたり破損したりしないように、厚みのあるキルティングのカバーなどでしっかりと安全に運んでくれます。

特にマンションはエレベーターやエントランスなども保護しなければならないので、お金をかけてまで養生資材を揃えるのは無駄になりますし、そんな建物への引っ越しなら、そこまでして自力引っ越しにこだわる必要はないと思います。

引っ越し業者に頼めば、万一そのような事故があったとしても、業者が加入する引っ越し保険で補償がききますが、自力引っ越しの場合はどうしてもリスクが高くなります。

ダンボールなどの荷造り用品の出費は

新品でなくても構わなければ、スーパーやドラッグストアなどで、いらないダンボールを譲ってもらうことができます。しかし、同じ大きさのダンボールをいくつも揃えるのは難しいため、積み重ねる際は入れるものと積み重ねる順番をよく考えておく必要があります。

重さのある食器などを一番上に積んだときは、荷崩れで落下した時の被害が大きくなります。葉物野菜などを入れて湿っているダンボールは強度が弱いため、引っ越しの荷造りに使うことは避けましょう。ダンボールを譲ってもらうにしても、潰してたたんで持って帰るのもなかなか労力のいることです。

他に、割れ物を包むための気泡緩衝シートや包装紙、ガムテープなども必要です。
引っ越し業者ならスーツなどのハンガーに掛かっている洋服をシワにならないように運ぶことができるハンガーボックスを貸し出してもらえますが、自力引っ越しの場合は大きめのダンボールに詰め込むことになるでしょう。

頑固なシワがつき、取れないときはクリーニング費用がかかるかもしれません。冬のコートなどは一着のクリーニング代は1,000円以上かかることもありますので、何枚もクリーニングに出すことを思えば、2,000円程度のハンガーボックスを買った方が安上がりでしょう。

また、布団をむき出しのまま運ぶのも直接肌が触れるものですから、抵抗がある人も多いと思います。古シーツなどで包むこともできますが、ない場合は布団袋を買うことになるでしょう。強度が強くしっかりしたものほど高くなります。引っ越し業者に頼めば無料貸出やビニールシートタイプのものがもらえます。

運搬の専門家なら安心して任せられる

さまざまな住居で、形のさまざまなものを運んだ経験のある運送のプロなら、ダンボールの持ち方一つとっても見ていて安心できます。大きなものでも、柱や梁の出っ張りをうまくかわして声を掛け合ってうまく運び出してくれます。ベッドの分解にしても、電動工具で素早く解体し、引っ越し先であっという間に組み立ててもらえます。

今までの経験から、何から運び出して、トラックにどう積めば良いのか、十分に分かりきっているため動きに無駄がありません。

その点、引っ越しの素人集団は、わからないことがあるたびに一回ずつ動きが止まってしまいます。大きな荷物の移動に全員がかかりきりになっている間に、先にトラックに積んだものが盗難にあうことがないとはいえません。

洗濯機や冷蔵庫を運ぶにしても、きちんと事前に水抜きをしておかないと他の家財を濡らしてしまいます。トラックに載せるときも必ず寝かせずに立てて運ばなければなりません。少しでもそういう知識がある人がいればいいですが、そうでないと引っ越し後、あちこちに故障箇所が見つかり、運が悪ければ修理で直らずに買い直す羽目になるかもしれません。

このように自力引っ越しは、引っ越しの細かなことに精通していないと、かなりリスクがあることを覚悟しましょう。また、手伝ってくれる人にケガなどさせないために、くれぐれも無理のないように気を配ってください。

まとめ

節約するために苦労して自力引っ越しをしても、かかった費用、時間、労力、気遣い、いろいろな面を考え合わせると、業者を使わなくて正解だったと思える人がどれくらいいるでしょうか。一度失敗をして苦い経験のある人は、二度と自力引っ越しなんてしない、と思うでしょう。

そもそも、自力引っ越しで安くすんで良かったと思える人は、自宅にトラックがある、無償で手伝ってくれる力自慢の家族がいる、築年数の古い賃貸で元からの傷がたくさんある、という人になるかと思います。