料金が安い業者に引っ越しを依頼するためには、複数社からの相見積もりが欠かせません。一社に決めたら他の業者に断りの連絡を入れる必要があります。言い出しにくく、ついつい日延べしてしまうと、キャンセル料がかかってしまうことがあるため気をつけましょう。
2018年6月からのルール改訂では、キャンセルする際の解約手数料が大幅に引き上げられるため要注意です。
引っ越し業者の上手な断り方
サービス内容や料金を比較するため、何社かの引っ越し業者に下見をしてもらい、見積もりを出してもらうのは普通の流れです。どの業者にするか結論が出るまでは、それぞれの業者のスケジュールとトラックとスタッフを仮予約していることになります。
予約でいっぱいになった日に、また別のお客さんからも引っ越し希望の問い合わせがあった場合は、「あいにく予約でいっぱいで」と断るか、返事を保留しなければならない状況になってしまいます。
引っ越し業者は見積もりをした相手の結論が出るまではどうすることもできず、間接的に他者にも迷惑をかけてしまうことになるため、断りの返事は早くしなければなりません。とはいえ、引っ越し業界ではよくあることですので、そう深刻に考える必要はありません。差し障りのない断りの定型句がありますので紹介します。
業者への連絡の入れ方
返事を保留している業者の見積もり担当者から電話で「その後いかがですか」と電話連絡があることも多いですが、できれば他社に決まった時点で早めにこちらから連絡を入れてください。
見積もり担当者からもらった名刺に直通の携帯番号がかかれていることも多いですが、断りの連絡は会社の代表電話で構いません。面識のない窓口の女性の方が気持ち的にもラクです。
キャンセルする際のおすすめの文言
キャンセルの理由は電話で逐一細かく説明する必要はありません。また、本当の理由を伝えることも不要です。「申し訳ありませんがキャンセルさせてください」と見積もり書のお客様番号や名前を伝えれば十分です。
業者によってはアンケートのように理由を尋ねられることがありますが、「主人がよそに決めてしまった」、「会社の指示で」、「親と相談した結果」などと決定権が自分に無かったことにしましょう。そして「見積もり担当者の○○さんによろしくお伝え下さい」と間違いなく伝えてもらえば、ほぼ追求されることはないでしょう。
「事情があり延期になった」と言ってしまうと「その後どうなりましたか」と定期的に連絡がきてしまいますのでやめておきましょう。「転勤の話がなくなった」と嘘をついても、引っ越し当日によその業者のトラックが停まって作業しているのを目撃されることがないとは言えません。顔を合わすのも気まずいので、ばれるような嘘はつかないほうが良いでしょう。
「他の業者の方が安かったから」という理由では、あとで担当者から電話が来て、それよりも値下げをしてくることもあり得ます。心情的にこの業者にしたかったのならラッキーですが、そうでない場合はキリがありません。
そんなときこそ、決定権は自分にはないことを伝えて断るのが一番です。これは、見積もりの時点でそうほのめかしておいてください。私はそちらにお願いしたいと思っていたのに、主人が、会社が、親が、と言えばそれ以上しつこく食い下がることはないでしょう。
何か言われれば「以前利用したことがあるので安心感があるらしい」とでも言っておくと良いです。一番安いところに決めたわけではないらしい、と伝われば値引きを提示して食い下がることもありません。
キャンセル料の有無について
そもそも相見積もりを取った相手に断りの連絡を入れること自体はよくあることで、それをキャンセルという言葉が適切かどうかは人により受け取り方が異なるかもしれません。
しかし、正式に見積もり日時を予約したのに不要になった、契約後に解約することになった、というのなら自己都合によるキャンセルとなります。直前ではドタキャンなんて呼ばれてしまいます。引っ越しの契約後のキャンセルに対しては、今までは利用者側にとって優位なルールがありましたが、今後は注意が必要になるため詳しく説明したいと思います。
見積もりのキャンセルで違約金はかかる?
引っ越し業者に連絡して訪問見積もりの日時の約束をしていたのに都合が悪くなった場合は、至急キャンセルの連絡をしなければなりません。「○日○時に見積もりをお願いしていたのですが、申し訳ありませんがキャンセルさせてください」と伝えましょう。
営業熱心な業者なら「それでは次回はいつがご都合宜しいですか」と聞いてくるでしょうが「会社の取引先に決まった」や「引っ越しが中止になった」で察してくれると思います。そもそも見積もりは無料なので、見積もりがなくなったことによる違約金はかかりません。
契約のキャンセルで違約金はかかる?
契約とは、引っ越し業者を一社に決めて正式に引っ越しの依頼をしたということです。特に契約書を取り交わすわけではなく、訪問見積もり時や電話などで「お願いします」と意思表示をした時点で契約をしたことになります。
今までは、引っ越し業者を所管する国土交通省が定めた標準引越運送約款では、引っ越し当日のキャンセルは引っ越し料金の20%以内の解約手数料、前日のキャンセルは10%以内の解約手数料というルールを設定していました。しかも、それ以前の引っ越し2日前までにキャンセルを申し出れば解約手数料は無料になっていました。
引っ越し業という業種の性質上、空いた時間にちょうどよく他の引っ越しの契約を取ることが難しいため、直前にキャンセルされてもその分の損失の穴埋めができないことから、利用者にとってかなり有利なルールになっていました。
そのルールを逆手に取り、安い引っ越し業者ととりあえず契約しておいて、その後さらに安い業者が見つかれば乗り換えるという方法をとる利用者が増えてきたのが原因との見方があります。
この背景には、インターネットで簡単に見積もりや引っ越し依頼ができるようになったこと、もし解約になった場合でもメールやweb上で簡単にキャンセルができてしまうことなど今の時代の現状があります。
違約金がかかるケースは?
2018年6月からは、これらの解約手数料の料率が一気に値上がりします。引っ越し当日のキャンセルは、解約手数料が引っ越し料金の最大50%まで引き上げられます。つまり、予定していた引っ越し料金の半分を支払わなければならないということです。
10万円の引っ越しなら5万円、30万円の引っ越しなら15万円を当日キャンセルの解約手数料として支払わなければなりません。
利用者にとって今まで手厚いと感じられたルールとはガラッと変わり、どうしても止むを得ずキャンセルしなければならない時は、かなり厳しいルールになってしまいますので気をつけてください。
ルールでは50%以内と記載されるはずですので、最大で半額、事情によっては少しはサービスしてくれるところもあるかもしれません。しかし、なるべくキャンセルではなく何とか延期の方向で話を進めた方が良いでしょう。
ちなみに、前日にキャンセルを申し出た場合は、最大で30%の解約手数料がかかるようになります。10万円の引っ越しなら3万円、30万円の引っ越しなら9万円です。そして、気をつけたいのは、今まで無料とされていた2日前のキャンセルでも最大20%の解約手数料の請求が認められる点です。
多くの引っ越し業者では、見積もり書の裏面にこれらのルールを記載した約款が印刷されていますので「目を通しておいてください」と手渡されるでしょう。受け取った以上は解約手数料を高額請求されても「知らなかった」、「昔はもっと安かった」と言っても通用しませんので十分に気をつけてください。
まとめ
引っ越し業者は一般貨物自動車運送事業や軽貨物自動車運送事業として国土交通省に届け出をして、正式に許可されて事業を行っています。その国土交通省が利用者とのトラブルを未然に防止するために制定したルールブックが標準引越運送約款です。多くの業者がこの約款を採用しているため、2018年6月から解約手数料が一斉に値上げされることになるでしょう。
引っ越しのまとめサイトなどでは、記事の訂正や更新が間に合わず、2日前なら解約手数料は無料という記述を見かけるかもしれませんが、それらの情報は古いものなので、そこでさらなるトラブルの元にならないように注意してください。疑問に思ったことは、引っ越し業者に直接問い合わせましょう。
※内容は2017年12月25日現在のものです。