引っ越し時のご近所挨拶のマナーと挨拶状の出し方

昔は引っ越したら「向こう三軒両隣」に手土産を持って挨拶に行くのは常識でしたが、これは今ほど単身世代が多くなく、家族で一緒に引っ越してくるなら子どもの学校の関係もありますし、お店や病院など、近所の様子を教えてもらうという現実的な面があったと思います。

しかしながら、今は昔ほど引っ越し挨拶は必要ではなくなってきているのかもしれません。そこで、最近の引っ越し時のご近所挨拶のマナーや挨拶状の出し方について紹介します。

引っ越しでご近所に挨拶はする?しない?

現代の状況を見てみると、昔と違ってコンビニや店はあちこちにあるし、スマホで検索すれば病院も出てきます。また、何よりプライバシーが重要視される時代なので、よその家庭に関わりたくないし、自分の生活にもかかわってほしくないという人も増えています。

特に女性の一人暮らしの場合、そうだとわかってしまうと変な人に目をつけられるのが怖い場合もあるでしょう。そう考えると引っ越し挨拶が必要かどうかは場合と状況、そして個人の考え方によりますね。

家族の引っ越しの場合

一家で引っ越しをするなら、新しいご近所さんへの挨拶はしたほうがいいですね。特に子どもやペットがいるなら、多少うるさいこともあるかもしれませんし、もしかしたらご近所に同じ学校に通う同年代のお友達がいるかもしれません。また、万一子どもが新しい町で迷子になってしまった時に「ああ、あの家の子だ」とわかってもらえるのは安心です。

集合住宅なら、2LDK以上のファミリー物件が多いマンションなら、周囲も家族で住んでいる人が多いでしょうから挨拶には行ったほうがいいでしょう。

単身の引っ越しの場合

単身の引っ越しなら、どんな場所に住むかによります。特に女性は気になるところですね。「女性専用」、「セキュリティ完備」など、女性が住みやすい仕様になっているグレードの高い物件であれば、挨拶は行ったほうがいいと思います。

どうしても不安なら、どんな人が住んでいるのか大家さんや管理会社、管理人さんなどに尋ねてみると「小さいお子さんがいるご家族ですよ」とか「ご夫婦でお住まいです」などと教えてもらえるかもしれません。家族の男性に挨拶についてきてもらってもいいでしょう。

逆にマンスリー物件のように入居者がコロコロ変わったり、あまりセキュリティが良くないような暗い感じの物件なら、まずそういうところに住むこと自体をおすすめはできませんが、誰がいるのかわからないので挨拶に行くのがちょっと怖い人もいるかもしれません。

その場合はゴミ出しや外出の際のエレベーターなどで会った人に挨拶をして自然に「顔見知り」を作っていきましょう。また、単身の場合家を空けていることが多く、生活時間帯や仕事の時間帯もバラバラなので挨拶したくてもなかなか会えないこともあります。

ここには挨拶に行っておこう

隣近所はまだ誰が住んでいるかわからないから挨拶を当面控える場合でも、管理人さんと大家さんには挨拶はしましょう。この二人と良好な関係が築けるかどうかでその後の住みやすさはかなり変わってきます。また、「このあたりは自治体がしっかりしているから自治会長さんにも一応挨拶に行ったほうがいい」などアドバイスをもらうこともできます。

ご近所挨拶のマナー

引っ越しの挨拶は、なるべく早くしましょう。できれば引っ越し作業の前にトラックを停めたりばたばたと人が出入りしたりして迷惑をかけるので、一言「これから作業をします、うるさくするかもしれませんがよろしくお願いします」と言っておくと好印象です。

時間について

できれば夕食時間の前にはすませたいものです。これは当たり前ですが、夜8時以降になってしまうようなら、翌日にしてください。田舎やお年寄り家庭ならかなり早く休んでしまうかもしれないので注意しましょう。

挨拶はどこまで行く?

一軒家なら「向こう三軒両隣」がお約束ですが、それにプラスして裏の家にも行きましょう。特に家の裏側にはトイレや浴室など水場がある造りも多く、その場合あまり距離が近いと水音が気になる人もいるかもしれません。一言挨拶をしているかどうかで印象も変わってきます。

集合住宅なら、両隣はもちろんのこと上下の階も行っておいたほうがいいですね。特に小さい子どもがいたり、ペットを飼っていたり、楽器を弾くなど音を出す可能性があるならその旨も伝えておきましょう。

何を持って行く?

持って行くものはあまり奇をてらわず日持ちがするおせんべいなどのお菓子や洗剤、タオルなどが無難です。あまり高価なものを持って行くと先方がかえって気にしてしまうかもしれないので、500円から1,000円程度が適当です。

その際、ギフトと一緒に「これからよろしくお願いします」と書いたカードを添えると気が利いていますね。今は特に集合住宅ではセキュリティ上の問題から、あえて玄関に表札を出さない家も多いので、カードがあれば名前を憶えてもらえますし、不在の場合ドアノブにかけておいても誰が来たのかわかるので二度手間が省けます。

ギフトには包装紙の上に「外のし」をつけておくと、きちんとした印象になります。わざわざデパートに行かなくても大型総合スーパーなど「お客様カウンター」がある店ならたいていつけてくれるのではないでしょうか。

挨拶状の書き方と出し方

友人、知人、仕事関係などは引っ越しの挨拶状を出します。メールですませるのではなく、ここはハガキのほうがベターです。

挨拶状はなるべくきちんとした文体で、拝啓から始まり、時候の挨拶、簡単な新居の紹介と引っ越しの理由を書き、敬具でしめます。定型文がネットにもたくさんありますし、印刷ショップでも相談に乗ってくれます。

親しい相手には堅苦しいと感じるかもしれませんが、その場合は手書きで何か書き添えたり、改めて連絡をすればいいことです。

年賀状や暑中見舞いで代用できるのか

引っ越し時期が年賀状や暑中見舞いのシーズンにかぶっているなら、これらのハガキで代用する人も多いです。特に失礼というわけではないのですが、年賀状のやり取りをしている仲であれば、相手はすでに旧居に年賀状を出してしまっているでしょう。

郵便局の転送サービスを申し込んでおけばそれらのハガキも届くことは届くのですが、もし引っ越しが年賀状を書く時期よりも前になるなら、別に出しておいたほうがていねいではあります。

離婚後の挨拶について

結婚の挨拶状は友人知人に送りますが、わざわざ離婚の挨拶状を送る人は多くありません。当たり前ですが、おめでたいことではないのでどう報告していいのかわからないとか、わざわざ式に列席してもらったり、お祝いをもらった人に気まずいというのもあり、ついつい「噂で耳に入らないかなあ」と自分からはアクションをしないという人が大半なのではないでしょうか。

離婚していることを知らず自分の結婚式に連名で招待状を出してしまうとか、「ご主人はお元気?」など悪気なく聞いてしまって、言葉を濁されて気まずい思いをするなんてことは意外と多いです。

知らなかったほうに非はないのはわかっていても、申し訳ない気持ちにはなりますよね。相手にこんな思いをさせないために、さりげなく離婚の事実を知らせることができるのが、引っ越しの挨拶状です。

「これからは子どもと二人の生活になりますが、親子力を合わせてがんばっていきます」
「再びシングルとなり、心機一転仕事にまい進する所存です」
などなど、あくまでもさらっと前向きな文言で書いてしまいましょう。意外とこれ、もらった人はすごく助かります。

今は人と人とのつながりが希薄になっていると言われます。やり取りも普段はメールだから別に住所がわからなくても困らない、近所付き合いもいらないと思うかもしれませんが、節目節目にきちんと大人としての対応ができる人、という印象を持ってもらうことは決して損にはなりません。